11月11日(土)大妻コタカ記念会主催文化講演会を開催しました。
今年度のテーマ「日本の四季に寄せる平安人の心」の2回目となる今回は「秋は野に山に空に」を演題に、前回に引き続き大妻女子大学名誉教授の柏木由夫先生にご講演いただきました。
柏木先生には今回もたくさんの資料をご用意いただき、それに基づいた和歌の解説は大変わかりやすく一層の興味を抱くことができました。
平安人が移ろいゆく季節とともに過ごしていた姿に思いを寄せ、さらに今を生きる私たちが古典の書物を通して、平安人の心を推し量ることができる素晴らしさをあらためて感じました。
講演は秋の歌題の中から、七夕、萩、荻、月、紅葉について解説いただきました。
「七夕」について
初秋の行事とされ、平安時代に詠まれた七夕歌には、二つの星が一年に一度出会うこと、出会うまでの心の動き、出会ったのちの心の動きなどが詠まれている歌を、例を挙げてお話しくださいました。
「月」について
旧暦八月(仲秋)の十五夜の満月は仲秋の名月として愛でられていて、月にお供え物を用意し宴を催していたそうです。
歌に詠まれる以外に物語にも数々登場しており、中でも「竹取物語」の最後ではかぐや姫が地上から離れて月に帰る場面が描かれ、八月十五夜の月光の輝きは荘厳な世界を演出していると話されました。
他にも宇津保物語や源氏物語に至るまで数々の物語の展開に十五夜の月が大きな役割を果たしていることもお話しいただきました。
「紅葉」について
平安和歌に数多く歌われている多彩な紅葉の世界について古事記、万葉集などに登場する歌、そして古今集などから百人一首に取り上げられている歌の数々をご紹介いただきました。
このたびは幣も取りあえず手向山 もみぢの錦神のまにまに(古今集 菅原道真)
紅葉を錦に喩えることは、紅葉の美しさを讃える最高の表現として親しまれた、ということを教えていただきました。
晩秋のこの日、木々の色づきが美しく目に映る季節にご講演いただき、参加された皆さんそれぞれに移ろいゆく季節への思いを抱かれたことと思いました。